放歌高吟 11月号

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    そろそろ皆様のお手元に月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が届く頃でしょうか。
    一ヶ月遅れの「放歌高吟」お届けいたします。

          色鳥

    秋晴やこちらは富士の見えぬ席
    タイル絵の富士山敬老日の混雑
    宝町公証役場なる糸瓜
    枝豆やあれは夫婦でない二人
    秋鯵も恋も腥くて困る
    飛蝗さんざん飛ばして来たる崖っぷち
    虫籠へ白き花など入れてやる
    花のようにかまきりうすみどりに潰れ
    色鳥はひかりを千切るように捷(と)し
    色鳥や野へ還りゆく音楽堂
    木の実跳ね小鳥のようなイタリア語
    赤い羽根百本くばり切って空

    最近あれこれ思い立つことがあって、身辺の整理を始めた。秋山好古の「身辺は単純明快でいい 」と言い切るカッコよさに憧れはするものの、何もかも捨てきった一遍上人の真似はできない。仙人でも世捨て人でもないので、日々の小さな欲は人生の大事なスパイス。うっかりとそれらを手放すわけにはいかない。
    が、しかし、今の自分なりに捨てられるものを捨て整理できるものを整理していけば、この我が身だとて少しは軽やかになり、軽やかになった分だけ残りの人生を悠然と暮らしていけるのではないかと夢想する。
    まずは、不用意に増えてしまったカードを整理し、使ってない通帳の類いを解約し、無駄に掛けてきた保険を精査し、実家の土地問題を弁護士事務所に相談した。母の介護のため介護施設二社との契約を結び、訪問看護の段取りも整えた。それらと並行し、家に保管してある大量の資料や本やゴミや思い出の類いをバンバン捨て始めている。
    こんなことを日々実行していると、「句集を作る」とは「句を捨てる」行為なのだと改めて認識し直す。句集として整理し発表してこそ、他者に伝え得る芸術表現になるわけだし、捨てることによって新しい何かが生まれ始めもする。これは句集を上梓する度に何度でも実感する真実だ。
    先日ぶんぶく句会の席で、待ちに待った句集スタイルの一冊『からからころと』を手にした。村重蕃さんの句集だ。表紙は書道家でもある奥様ももさんの手による作品をデザイン化。青墨の滲みが実に美しい。

      青墨もすだちも青く匂いたつ             いつき
      柿かめばからからころと動く顎

    ぶんぶく句会恒例の席題である「今宵饗される食材」を詠み込んで、作者蕃さんに捧げる二句。そして句集名「からからころ」は、彼のこんな一句にちなんでの命名である。

      無患子のからからころと別れよか   蕃

    手に取って読んでみると、小憎らしいほど落ち着いた滋味と「からからころ」 と鳴りそうなほど軽やかな俳味に満ちた一冊。読後、思わずつぶやいた我が夫のこんな台詞を拝借しての一句を、再度、蕃さんご夫妻に贈りたい。

      柿食うて第二句集を待ち望む     いつき&兼光

    色鳥のひかりが押し寄せる明日への希望の糧として。

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